物売りの声や鳴り物
江戸時代から盛んになった天秤棒を担いだ物売り『棒手振(ぼてふり)』日
用品の食材から生活用品まで衣食住に係わる全てのものが売られており、幕
府の許認可を受け鑑札を持った者だけが営業出来たといわれている。
思い起こしてみれば子供の頃には色々な物売りが来たなと懐かしく。思いつ
くまま書き出してみました。時代は1955年~1965年頃が多い。
その前に忘れてはならないのが行商のおばさんYさん。茨城県から重たい籠
を背負って野菜等を売りに来た。我が家が中継地点で荷を下ろし近所に声を
掛けて、近所のおばさん達が集まって来る。Yさんの持ってくるデコボコの
トマトや曲がった胡瓜等、種が確り入っていて今思い出すと味が濃くて美味
かった。特にアンコの入った草餅は好物だった
・ 納豆売りの少年 早朝に『ナ-トゥ、ナットナットゥナット』納豆の形は
三角形だったと記憶している。
・ 浅蜊売り 朝にしわがれた声で『あ-、あー、あ-』
・ 豆腐屋 『ラッパの音』で聞き分けて、いつもの豆腐屋さん
・ 紙芝居屋 『大太鼓でドンドン・・』5円で水飴かソース煎餅と紙芝居
・ おでん屋 鐘を『チリン、チリン』お小使いの5円でカレーボールが1個
夕飯のおかずの時はお鍋持参でおつゆもたっぷりと入れてもらった
・ ものほし竿売り 『タケヤーサオダケー』と名調子
・ 羅宇(らう)屋 『ピー』という音。キセルの修理やヤニ掃除、いつも蒸
気が出ていた。
・ 鋳掛(いかけ)屋 鍋底の穴を塞いで修理、私の記憶では折れた傘の修理
・ 金魚売り 『キンギョーイ、キンギョー』
・ 風鈴売り 風鈴の音『リン、リン』いっぱいぶらさげて涼しさを呼ぶ
・ 爆弾屋 トウモロコシの種や米を持ち込み、回る圧力ガマで炒ってアラレ
にして貰う。出来上がり前に『ドーン』とすごい音がして耳をふさぐ
・ 玄米パン屋 『ゲンマーイパンのほやほやー』このパンの味が懐かしい
・ 信州リンゴ トラックで来て『美橋美智也』の曲が流れ、人が集まる
・ 石焼き芋屋 『イシヤーキイモ―』軽自動車の後ろで釜の中が燃えている
・ 夜鳴そば屋 『チャルメラ』哀愁をそそる
夜の石焼き芋屋と夜鳴そば屋は大人になっても来ていた。たまに買うと次回
からその近くにしばらく止っていた。
その他に隣が店屋だったので魚屋さん、近所の人も集まって来ていた。その
他売薬(置き薬)屋 紙風船を貰った。
当時の事を考えて見るとまず下町である。自宅に冷蔵庫がない。買い置きは
しない。買い物もそのつどで行商のおばさんや豆腐屋さんにひと声かければ
すぐに対応で便利、お米も声をかければお米屋さんが持ってくる。当時スー
パーには置いてない(米穀通帳の時代)。隣町に尾久銀座商店街や熊野前銀
座商店街があり、母は毎日買い物籠をさげて買い物に出かけていた。今では
大型スーパーに行けば何でもそろい、まとめ買いも出来る。必要なものはコ
ンビニでも簡単に手に入る。とても便利な時代になったが何故か昔が懐かし
い。今ではあまり見かけなくなったが、当時有った店に乾物屋、味噌屋、金
物屋などがあった。